私たちはデンマークに暮らす日本人です。
デンマークでは人々はデンマーク語を話します。
私たちもデンマーク語を頑張って話しますが、母国語は日本語。
一番リラックスして話せる言葉は、日本語です。
デンマークには、日本人の両親を持つ子どもたちも暮らしています。
また、デンマーク人と日本人の間に生まれた子どもたちは、日本のルーツも持っています。
そんな子どもたちに、私たちの母国語で絵本を読んであげたい。また、子どもたちが日本語の絵本に出会える機会を作りたい。そんなことを考えていた私たちは、自分たちで日本語の絵本を集めた小さな文庫を作ることを考えていました。
そんなある日、私たちはコペンハーゲン中央図書館で、偶然、外国語児童書コーナーを見つけます。この図書館には、デンマーク語の絵本と共に、38ヶ国語もの児童書・絵本が揃えられていました。
なぜ、デンマークの公共図書館に外国語の絵本がこんなに置いてあるのだろう?
後にその理由が、海外からデンマークへ移住してきた人々やその子ども達のため、彼らが母国語に触れることの大切さを思い、デンマークの図書館が40年以上も前から始めた取り組みだということを知りました。
私たちと同じように、デンマークの公共図書館が、外国(デンマーク)で暮らす子どもたちのことを考え、そして母国語の本を置いてくれているという事実は、私たちにとってとても新鮮な驚きでした。
しかし残念なことに、デンマークの図書館には日本語の絵本がまだほとんどありません。必要性の高い言語の絵本が優先して揃えられるからです。
でも、母国語に触れる大切さは、どの国の人々も同じです。
もし図書館に日本語の絵本があれば、子どもたちがどこに住んでいても、無料で、気軽に絵本を借りて読むことができるはず。
そう考えた私たちは、コペンハーゲン中央図書館の児童書担当者と話し合いを重ね、私たちで日本語の絵本を募り、図書館に寄贈するというプロジェクトを発足させることにしました。
それが、“えほんのたね”プロジェクトです。
もし、図書館に絵本が寄贈されれば、その絵本はコペンハーゲンだけでなく、デンマーク国内全ての図書館から自由に貸し出しができるようになります。
デンマークでは、全国の図書館がすべてネットワークでつながっており、借りたい本が遠い図書館にあっても、一番近い図書館まで送ってもらって借りることができるからです。また、スウェーデン、ノルウェーの図書館からも自由に貸し出しができるようになります。
寄贈された絵本は、北欧全土に住む子どもたちに引き継がれることになるのです。
そこで、デンマークの図書館に寄贈する絵本は、できれば、こちらに住む私たち日本人だけではなく、私たちの母国である日本の皆さんの、今でも心の中に残っている思い出の絵本、または北欧に暮らす子どもたちにもぜひ読んでもらいたいと思う絵本、など日本の皆さんの思いのつまった絵本で贈ることはできないかと考えました。
皆さんの思いのつまった絵本の“たね”がデンマークで大きく花開くように。
または、このプロジェクトが皆さんとデンマークをつなぐ未来の“たね”になるように。
しかし、私たちは、日本に住む皆さんがあの未曾有の大震災を受けた直後だということも心に刻んでいます。テレビやネットから流れる映像に、ただただ涙を流したあの日々を、私たちも決して忘れてはいません。被災地の子どもたちに絵本を贈るプロジェクトがあるということもネットを通して知りました。
でも、もし皆さんが、自分が好きだった絵本のことを思い出し、遠く離れたデンマークへも思いを馳せることで笑顔になれることがあったら・・
あなたの“えほんのたね”をデンマークに蒔いてみませんか?
その“たね”から生まれる未来を私たちは大切に育てていきたいと思っています。
2011年10月